センペルビウム -Sempervivum-
この小さな体からは想像もできない強さを持つ、ベンケイソウ科「センペルビウム(センペルビューム)属」の仲間たち。今回はこの一見可愛らしい、しかしとても強健な多肉植物をご紹介します。
センペルビウムは緑色の地肌に濃い赤紫色の模様が入る姿が一般的で、こんもりとしたロゼット形に葉を広げます。
育っても1頭数センチ程度の小柄な体つきでお花のような可愛らしさながら、非常に寒さに強く、よく増え、多くは通年屋外でも管理ができるので気負わずに栽培できる植物です。
センペルビウムの原産地とその生育環境
センペルビウムの原産地は主にヨーロッパなどの山岳地帯で、約40種が知られています。標高が高く、時期によっては一日の気候の変化も大きな厳しい環境。
そのような山地の日当たりの良い岩場などにまとまって自生しています。
センペルビウムの特徴
高地(寒冷地)に適応した性質のため、日本では北海道(−15℃程度)でも野外露地植え栽培が可能なほどタフなセンペルビウム。雪を被っても大丈夫です。
乾燥にも強く、お水や用土が少なくても耐え生き延びる事ができます。
その強健さから「semper(常に)vivus(生きる)=永遠に生きる(ラテン語)」と名付けられたほど。古代ローマ人はこの不老不死にも思えるような植物にあやかり、死者の魂に祈りを込め墓地をセンペルビウムで飾ったのだそうです。
センペルビウムの育て方
用土・日光・水やり・場所
●鉢植えの場合
センペルビウムは日光を好みますので、通年屋外の日当たりの良い場所で育てます。ただし寒さや乾燥に強いぶん、真夏の暑さや、特に’蒸れ’は苦手とします。そのため梅雨時期は少しでも風通しの良い場所へ、更に真夏は半日陰もしくは30~50%の遮光をしてあげると無事夏を越しやすくなります。
春や秋によく育ちますので、その時期は2週間に1回程度、たっぷりと灌水を行います。タフな植物ですが真夏と真冬は生育が鈍るので、その時期の灌水は様子を見ながら月1回程度、乾燥気味に管理を行ないます。乾燥にはとても強いのでしばらく断水をしても大丈夫です。
センペルビウムは根が細めのため、他の多肉植物同様、通気性と水はけの良い細かめの用土に植え付けます。また仔吹きも多いので、通気性さえよければ草花用の土を少量混ぜ込んでも大丈夫です。(仔株の根が土を掴みやすくなります)。
山岳地域の植物のため、夏の暑さや湿気が苦手です。前述のとおり、梅雨から夏場にかけてはお水を控えてなるべく風通し良く、そして少しでも涼しい場所に置いてあげてください。
冬場はかなり低い温度まで耐えることができますが(-10℃以下でも!)、不死身ではありませんので、早めに水やりを控えたり、あまりに寒そうな日は念のため「寒冷紗」などをかけて寒風に当てないなど、少し気を付けてあげるといいかもしれません。
●露地栽培の場合
露地植え栽培の場合も日当たりが良い場所を選ぶのは同じですが、あまり得意ではない梅雨時期から夏場のことを加味して、「水や空気が溜まりにくい」「ひどく西日が当たらない」など、夏季に過ごしやすそうな場所を選んで植えつけます。高さのある花壇やロックガーデンなどがおすすめです。
水やりは基本的に天候に任せますが、あまりに雨が降らないようであれば様子を見て潅水を行ないます。(葉が青々と開いているような状態であれば、急いであげる必要はありません。)
鉢植え同様、用土は通気性と水はけの良いものがおすすめです。用土を入れ込む前に大きめの石などを下に敷き、更に水はけを良くしておくと蒸れにくくなります。
おすすめの植え替え時期
植え替えは生育が旺盛な春や秋がおすすめです。
また成長して株が混みあってきた場合は、多少間を間引くようにカットして風通しを良くすると枯れこみを防げますので、蒸れやすくなる梅雨~夏前ごろにお試しを。カットした方からもまた根が出ますので挿し穂として使えます。
センペルビウムの増やし方
寒い冬を乗り切った後、春には「ランナー(ライナー)」と呼ばれる匍匐茎を株の周りに盛んに出してその先に仔株を付けます。
センペルビウムの葉は薄めのため葉挿しには向かず、殖やしたい場合はこの仔株が出てくるのを待つのが一般的です。(その他、交配して種を蒔くという方法でふやすこともできます。)
それぞれの仔株はまた各々ゆっくりと根を下ろして成長していくので、株によっては一気に大家族に。
メッテニアナム錦の成長の様子<2年間>
ランナーで仔株をふやし大家族になっていく「メッテニアナム錦」。1年間でなんと約10倍に!力を使ったのか少し株が痩せてきたので春に植替え予定です。
…と言っていたのですが、そのまま夏を越してしまいました(22年9月追記)。
今年の夏もとても暑い日が続きましたが、「午後から半日ほど陽が当たる外の棚・遮光30%・ほぼ水やりなし」という環境で無事夏越しをしてくれました。この秋こそしっかり植え替えしたいと思います(フリではありません..)。
ちなみに、どのセンペルビウムもランナーで仔株が出た際、跳ね上がって用土に付かないままの仔は枯死する事があるので、確実にふやしたい場合はU字形にした小さな針金でランナーを用土に固定してあげるなど、工夫をしてみてくださいね。
センペルビウムの花期と「一稔性」の特徴
センペルビウムの花期は梅雨の終わり~初夏ごろ。ロゼットの真ん中を長く伸ばして白~薄桃~濃い桃色の花を咲かせます。
しかし開花率はあまり高くなく、数種類を育てて1苗咲くか咲かないかくらい。
また「一稔性」といって、花を咲かせた株は枯死してしまう性質を待ちます。といっても株全体ではなく「花が咲いたロゼットだけ」なので、ランナーでしっかり仔株がふえていればその他は安心ですよ!
センペルビウムの季節ごとの姿とカラー(紅葉)
ベンケイソウ科らしく、季節ごとに色柄や姿がかなり変化するのも特徴的です。
寒さや日差し、乾燥などが強いと濃い赤紫色に紅葉し、株の個性や特徴がよく出てきます。一方で気温や湿度の上がる梅雨から夏場にかけては全体的に緑色がかります。
水分の減少や寒さなどにより体がギュッと縮こまり、同じ植物とは思えないような姿になる事も。
一見「枯れてしまうのかもしれない…」と思えるような姿ですが、過ごしやすい時期が来れば、またゆっくりと葉を広げてくれるはずです。
可愛らしい姿ながら、強健であまり手のかからない逞しいセンペルビウム。
忙しい生活のなかでもマイペースに育てられ、またその強さから生きる勇気をもらえるような、素敵な多肉植物です。
ホームセンターや園芸店はもちろん、100均のダイソーさんなどでもたまに取り扱いがあります。通販などでも購入可能。ぜひ覗いてみてくださいね❁
・おまけ追記(寄せ植えの変化)
トップの画像に使ったセンペルビウムの小さな寄せ植えですが、一年も経たないうちにこのような状態になりました。
センペルビウムの寄せ植えはとても可愛いですが、小さな鉢にはあまり向きません…!
寄せ植えをする際は、余裕のあるサイズの鉢でぜひのびのびと育ててあげてくださいね。
ー今月のひとことー
何話か前の回で「五時半起きの朝活太極拳に励んでいる」と揚々と語ったのですが、もうすでに参加できていません..ごめんなさい…寒いんです朝が…全然起きられません..ごめんなさい…でも冬は..長めに寝たほうがよい季節らしいので…(東洋医学マメ知識)