マッソニア -MASSONIA-
対生する葉を2枚、地際にぴったりと広げてその中心部にふんわりとした花を咲かせるキジカクシ科の「マッソニア属」。今回ご紹介するのは、その姿も生態も、とてもユニークな球根性の植物です。
マッソニアは球根性の多年草で、いわゆる’多肉植物’とは少し見た目が違いますが、原産地がその他多くの多肉植物と同じく南アフリカということもあり、現在お店や多肉イベントなどではそれらと一緒に多肉植物のお仲間として販売されています。
マッソニア属の特徴と成長サイクル
マッソニアに特徴的なのは冒頭にお伝えしたとおり「地際に広がる2枚の葉」。
その大きく平らに広げた葉で沢山の陽の光を集めるのはもちろん、土中の球根が強い日光で熱されることを防いだり、雨露を株元に集めたりする役割もあるようです。
こういった仕組みは日差しの強い乾燥地帯で進化してきたマッソニアならではの特徴かもしれません。
また「2枚の葉のみ」というシンプルな草姿ではありますが、葉の色や柄、葉表面の凹凸の有無や花の色形など、品種によって様々な差があり、マニア心がくすぐられる植物でもあります。
マッソニアの1年間の成長サイクル
マッソニア属の多くの品種は、暑い夏が近づくとその葉を落として休眠し、その間は「地上部には枯れ葉だけ」という姿になります。
そして涼しくなる秋頃にはまた新たな芽を地上に出して、2枚の葉を地際に展開していきます。
冬が始まる頃には葉の展開が落ち着き、その後、葉の基部に蕾を付けて12月頃から次々と開花が始まります。
開花期間は1~2週間程度と比較的長めにお花を楽しむことができますよ!
また、成長するごとに年々花自体のサイズも大きく立派になっていきます。
開花が終わった後、受粉が成功した花に関しては2月~3月ごろに、枯れた雄しべや花弁と入れ替わるように種子の鞘(さや)がゆっくりと顔を出し始めます。マッソニアは自家受粉(一個体のみで種をつけること)も一部可能な植物で、結実も比較的容易な印象です。
鞘がしっかり熟れると、その後乾燥してふわりと球状に広がり、まるで再び開花したかのような美しい姿が楽しめます。
種子はその鞘の球状を形作る沢山のカプセルに分かれて収まっており、より乾燥が進むと風やその他の刺激でカプセルが分離して、周囲に種がこぼれ落ちていく仕組みとなっています。(早めに収穫をしないと、種がポロポロと落ちていってしまいます。)
鞘がからからに萎びてくる頃には春を迎え、梅雨~夏場が近づいてくると、2枚葉は徐々に黄色みがかって枯れ始めて、再び夏の休眠シーズンを迎えます。
マッソニア属の育て方
暑さ寒さに強く丈夫です
季節ごとの管理が分かりやすく、育てやすいです
マッソニアは丈夫なことに加え、成長段階が季節ごとに目で見て分かりやすいため、とても育てやすい植物です。
■梅雨頃〜夏場(休眠期)の管理方法
夏前頃、地際に広がっていた葉が黄色く枯れ始めると休眠の合図です。(枯れきった葉はスポッとつまんで抜けます。)
地上部が全く無くなるこの時期は断水しても大丈夫。陽の光もさほど多くは必要ないので、風通しの良い明るい棚下などにおいてあげてください。(うっかりそのまま存在を忘れないように… ←自戒をこめています)
■秋〜冬~翌春(生育期)の管理方法
生育期の始まりは涼しさが増してくる秋口(10月頃)。お水をやらなくても自然に土から新芽が顔を出しますので、その新芽を確認後、少量ずつ水やりを再開します。頻度は様子を見ながら、生育期間中は2週間に1回程度たっぷりと行います。
マッソニアの葉はお水を吸うと張りが出て、ピンっと硬めに広がります。逆にお水が足りなくなるとやや柔らかな手触りになりますので、灌水しようかするまいか悩んだときは優しく葉に触れて様子を確かめてみてください。ただ、水量にはさほど気難しくない印象ですので、難しく考えすぎなくても大丈夫です。
また、生育期間中はよく陽に当てて締まった株に育てると色づきも良く、品種ごとの葉の特徴がより出やすいのでお勧めです。直射日光下で育てることができます。
■厳寒期(2月あたり)の管理方法
厳寒期でも球根さえ凍らなければある程度の寒さには耐えてくれます。暖地のわが家では種まき1年目の小さな苗も含め、全て通年屋外にて冬越ししています(瞬間最低気温-4℃・日中最低気温-2℃/ビニールで寒風は防いでいます)。
凍結を防ぐためこの時期の水やりは控えめにします。寒波が弱まり晴れの日が続きそうなタイミングで少量灌水を行うのがおすすめです。
お住まいの地域によっては「夜間のみ室内に取り入れる」「この時期だけ明るい室内に取り込む」など、工夫されてみてくださいね。念のため、氷点下以下に気温が下がるようならば取り込むことをおすすめします。
2月を過ぎ、寒さが和らいできたら再度通常の「生育期の管理方法」に戻します。
その後、春が来てさらに梅雨が近づき、少しづつ葉が黄色みを帯びてきたら休眠の合図ですので、徐々に水やりの頻度を減らしていきます。
マッソニア 球根の植え替え
マッソニアは根をいじられる事にもわりと寛容なため、基本的には厳寒期と休眠期以外ならいつでも植え替えを行えますが、強いて言えば休眠が明ける直前直後の秋口(生育期のはじめ頃)がおすすめです。
通常の多肉植物よりやや深めの鉢(ロングポットなど)を使い、球根がしっかりと隠れるように用土を被せます。植える用土にもあまりうるさくありませんが、通気性の良いやや細かめの用土がおすすめです。
マッソニアの種まき(実生)方法
マッソニアは種から育てることも容易な植物です。
鞘からこぼれ落ちる前に採取した種を、通常の多肉栽培用土とたねまき培土を半量ずつ混ぜ入れた鉢にばら撒き(土はかぶせず)、お水を浅く張ったトレイなどに置いておくと3週間ほどで発芽が始まります。
葉のサイズが年々大きくなっていくのも見ていて楽しいですよ!(同じ苗の自家受粉種子なのに、それぞれ葉の色の入り方が違っていて面白いですね。)
夏場には生育が鈍るので、種まきは種子を収穫後すぐの春ではなく、夏を過ぎた次の秋に行うことをお勧めします。
主な品種紹介
「マッソニア ロンギペス Massonia longipes」
南アフリカ沿岸部に自生する品種。
凹凸・突起のある葉(緑〜紫色)と、ほんのりピンク色がかるおしべが特徴的です。
「プスツラータ (Massonia pustulata)」というよく似た品種と同じものとされていた歴史があり、現在でも名前が混同されがちなので気をつけます。(プスツラータはおしべが真っ白です。)
「マッソニア ジャスミニフローラ Massonia jasminiflora」
南アフリカの南東に広く自生する品種。
’ジャスミンの香りの花’という名前のとおり、開花中室内に取り込むと、お部屋が華やかな香りでいっぱいになる素敵な品種です。(屋外に置くと沢山虫が集まってきます。)
「マッソニア デプレッサ Massonia depressa」
南アフリカの半乾燥地帯に広く自生し、花弁の底にゼリー状の蜜を分泌する面白い品種。
マッソニアの品種の多くは虫が花粉の媒介をしますが、デプレッサはこの分泌した蜜によってネズミを引き寄せ受粉作業を手伝ってもらっていることが研究で分かっています。自生地近くのネズミの糞からはこの花粉がしばしば出てくるそう。
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参考リンク
デプレッサの花粉・蜜とげっ歯類による受粉の関係調査 『Rodent pollination in the African lily Massonia depressaS D Johnson et al. Am J Bot. 2001 Oct.]』
「2枚葉・中心部に花」という比較的シンプルな外見ではありながらも、それぞれに独自の特徴を持つマッソニアの仲間たち。
季節ごとに見た目の変化が大きく、管理方法も分かりやすいので、気負わず楽しんで育てやすい植物です。多肉専門店やネットショップ、各種植物イベントなどが主な入手先となりますので、お時間があればぜひ覗いてみてくださいね❁
ー今月のひとことー
徐々に寒さが増してきましたが、お風邪などひかれていませんか?
わが家の犬(写真は子犬時代)に「そろそろ冬将軍が来るよ~」と伝えると、「えっ!くる!?」という顔をして慌てて玄関に迎えに行き可愛いかったです(^^;)冬将軍は玄関から…