リトープス –Lithops–
「生ける宝石」との異名を持つ多肉植物の「リトープス」。
リトープスは南アフリカやナミビアなどの広大な乾燥地帯に自生する植物で、1体数センチ程度の小ぶりな体ながら、ついつい目を惹かれてしまう色や模様を持つ魅力的な多肉植物です!
リトープスの特徴と原産地
リトープス(Lithops)とは、古代ギリシャ語の「石:lithos」と「顔:ops」からなる名前です。
自生地ではその「石のような顔」という名のとおり、「周囲の石に擬態する」という独自の進化方法で動物たちの食害から逃れ、また背丈をコンパクトにおさえることで強い日差しや乾燥から身を守るなど、環境にうまく適応しながら生き続けてきました。
擬態した礫土から少し顔をのぞかせて、その上部の窓から光を取り込み成長していきます。
原産地である南アフリカやナミビアなどの地表には、瑠璃やジャスパーなど、赤褐色やブルー、グリーンなどの色彩豊かな貴石が混ざっており、自生地ではそれぞれの地域の礫石に合わせて様々な色や柄に進化したリトープスの群落を見ることができます。
また、確認された群落には専門の研究家によってそれぞれナンバーがつけられており、現在は420ほど存在しています。(ただしそれらの多くは私有地内にある為、無断で入ると猟銃で狙撃されかねないそうです…!)。
リトープスは白い石英に紛れていることも多く、遠くの山裾などがポツポツ白く見えていると「あの辺りにありそうだな」と推察することができるそうですよ。
他に類を見ないユニークな外見や生態、また交配や実生(種を播いて育てること)が比較的容易なことなども相まって、現在では世界中に愛好家が増えています。
そのため交雑もすすみ、今では原産地に無い色柄の苗も数多く誕生。
それはとても嬉しいことなのですが、一方で「ナンバーや交配の詳細が分からない苗が増えてしまった」という少し残念な点もあるため、専門家やセミプロ愛好家などはナンバー管理を大切に原産地特有の色柄を存続させたり、より特徴的なものにする/または種子を播いて偶然出てきた珍しい苗を品種として固定できるよう試みるなど、日々国を超えた交流を行い、長い年月をかけて交配や実生・育成に尽力されています。
日本に紹介されはじめた数十年前は、なんとお値段がひと月分のお給料の半分〜3分の1もするほど高価な植物だったというリトープス。
現在ではその育成努力や人気の広がりから園芸店やネットショップでも比較的安価に購入できるようになりましたので、ぜひ一度手に取ってみてくださいね!
リトープス 育て方のポイント
-日光・水・温度・用土・植替え-
リトープスは日光を好み、暑さ寒さにも比較的強いのですが、あまりの高温多湿や蒸れる環境はとても苦手なので常に風通しの良い場所で育てます。
よく陽の当たる屋根付きのベランダや、雨の降り込まない屋外に置いてあげてください。
夏場は半日陰(50%)ほどに遮光して直射日光を避けますが、それ以外の時期はなるべくしっかりと陽に当てて育てます(遮光20%~直射日光)。蒸れないよう風通しには気を付けて。
水やりは、春と秋の成長期には月に2〜3回ほど、それ以外は月に1回ほどで大丈夫です。水が多すぎたり光量が足りないと、細長く丈が伸びてしまったり腐りやすくなったりと、見映えや生育面ともに良くないのでご注意を!
お水が足りない時は球体の側面にシワがよってくるので時々チェックしてみてください。
暑さ寒さに強い植物です。暖地の我が家では真夏も真冬も通年屋外の棚で管理しています。(38℃~-4℃。雨や雪はかかりません)
関東の有名なリトープスナーセリーでも一部露地植えにされているくらいですが、万が一のこともありますので冬季は零℃近くになったらよく陽の当たる室内に取り込まれることをお勧めします。(寒い国に住む友人は室内LED栽培で冬を越しているようです)。
その際も蒸れないように何卒ご注意ください。
植え替えは過ごしやすい春か秋に行います。ただし、春は脱皮(後述↓)との兼ね合いがあり水やりが少し難しいため、秋が一番おすすめ。リトープスの根は細いので、通気性の良い細かめの用土を使います。抜き上げた苗に付いた土や古い根を指でしっかりと取り除いてから、新しい鉢と用土に植えつけます。
植替え時に注意
リトープスの根には小さな白い粉のような「ネジラミ」がつきやすいのでしっかりチェックし、もし付いていたら「念入りに取り除く・流水で洗い殺虫剤に漬けるもしくはオルトランなど顆粒の殺虫剤を混ぜ込んだ用土で植え付ける」など、対応してみてください。
「長く育てているけど大きくならない・水やりしてもシワが戻らない」などの場合、このネジラミが原因の可能性もありますので、よい時期に鉢から抜いて根っこをよく調べてみてくださいね。
リトープスの花期と交配方法~種子の採取まで
暑い夏場は半休眠しやや生育が鈍りますが、涼しくなる秋から冬の成長期には白や黄色のかわいい花を咲かせます。リトープスはこの花同士を使って、交配や種子の採取を行う事が比較的容易です。
交配方法
花弁の中心部から1本突き出た噴水のような形状の部分がめしべ、その周りをぐるりと囲む腰ミノのような部分が雄しべと花粉(先端部)です。交配する際は花粉がよく出ている雄しべをピンセットでつまみ取る・もしくは筆やテグスなどで花粉をぬぐい取り、めしべのカールした先端に優しく付けていきます。
種子の採取
種ができたかどうかは「花の付け根部分がしっかりと膨らんできているかどうか」で確認できます。花弁が萎れて枯れ、その様子がはっきりと分かるようになるまで1か月以上はかかりますので気長にお待ちください。また収穫までは更に2か月ほど置き、青みがかっていた種子の鞘(カプセル)が茶色く萎びてから採取します(春頃)。
収穫した鞘をお水につけておくと、ゆっくりと鞘が開いて花のように広がり、中から粉のような小さな種子が出てきます。それをピンセットなどで残らず取り出し、乾かして採取は終了です!種まきは秋がおすすめ。
「脱皮」の時期の育て方と「分頭」について
リトープスは年に一度、花を咲かせた後の春先に「ゆっくりと表皮を裂くように内側から新たな球体が出てくる」という摩訶不思議な「脱皮」を行います。
脱皮の期間中は外側の旧体に水分が残っている為、あまり灌水を必要としないようです。(脱皮は大体毎年3月~6月あたりに、3か月ほどかけてゆっくり行われます。)
この時期に灌水が多いと二重脱皮(=脱皮に脱皮を重ね球体が小さくなってしまう)状態になりやすいため、水やりは様子を見ながらすこし控えめに行ってみてくださいね。日光にはしっかりと当てましょう。
また、脱皮の際、個体が2頭に増える「分頭(ぶんとう)」を行う事もあります。
リトープスは基本的に実生(種まき)と、この「分頭」でしかふやすことができませんので、育てておられる方はこの時期を楽しみにしていてください!
こうした脱皮や開花の時期以外にはあまり大きな変化がないようにもみえるリトープスですが、その体の中では人知れずまた次の年に向けた新たな球体が時間をかけて作られています。
一見植物とは思えない独特な姿と生態で非常に魅力的なリトープス。
大きく育っても1体数センチほどですので、小スペースでじっくりとマイペースに育てられる植物です。園芸店などでお見かけの際はぜひ手に取ってお楽しみくださいね!
ナンバーがついた苗の姿はこちらのサイトでご覧になれます。
◆「lithops info.」
世界的に有名な日本唯一のリトープスナーセリー
◆「群仙園」
―今月のひとこと―
リトープスと一緒に夏場は休眠してしまいたいほど毎年しっかり夏バテする虚弱体質のため、今年はご飯に加えて、’最強食品’としておすすめされた’ゆで卵’を1日1個食べて強くなろうとしたところ、はや3日で卵をみると気持ち悪くなりはじめ困っています(虚弱)。思い切ってプロテインに変えてみたところ、発熱(虚弱)。お次は体にいいと聞いた「ボーンブロス」なるものを試してみようと思っています…!(やる気だけはある)
皆さま、お互いなんとか無事に夏を乗り切りましょうね…!