フォーカリア -Faucaria–
大きな口を開けた怪獣のような姿が目を惹くハマミズナ科「フォーカリア属」を今回はご紹介していきます!
フォーカリアってどんな植物?
葉の縁にまるで牙のような鋸歯(きょし)が現れる姿から、ラテン語で「fauces / 動物の口」という意味の名が付けられているフォーカリア。海外では通称「Tiger Jaws / 虎のあご」とも呼ばれています。
南アフリカの東ケープ州やカルー台地周辺の、開けた岩場や茂みに生える灌木の根元などに自生する植物です。
フォーカリアは対生する三角形の葉を積み上げるように重ねながら、ゆっくりと成長・群生していきます。育っても草丈はさほど伸びず、あまりサイズも出ないので、お家やベランダなどでも管理がしやすい植物です。
日本でも古くから栽培が行われ、漢字の和名がついている品種が多いのも特徴的です。
フォーカリアの特性と原産地の気候
原産地はほとんど雨の降らない時期のある「地中海性〜半砂漠性気候」の為、乾燥にはとても強いです。
葉の縁の独特な鋸歯は、そのような気候の特徴により、空気中の水分や貴重な雨粒などを効率的に根元へと集めるため進化したものと考えられています。
また、梅雨時期の高温多湿を除けば、暑さや寒さにも強めでとても育てやすい印象です。
暖地のわが家では通年無加温・雨や雪の降り込まない屋外軒下栽培(夏38℃〜 冬-3℃)で、ひどく表情を変える事なく無事育っています(置き場は南向き、厳寒期はビニール保護あり。)
ただし念のため、これからお育ての方は下記の育て方を参考になさってみてください。
フォーカリアの育て方
–用土・水やり・温度・植替え–
日本で育てる場合、人間が過ごしやすい時期(春、秋)が生育期と考えてその時期は週に1回程度、様子を見ながら水やりを行います。
梅雨から真夏にかけて、また真冬に関しては生育が鈍り、水やりがダメージとなる場合がありますので、その時期は月に1回程度に控える、もしくは完全に断水しても良いと思います。
※ ただし乾燥させすぎるとハダニがつく場合があるようですので、断水させる場合、特に冬から春にかけては霧吹きなどでかるく葉水をあげると良いかもしれません。
日差しを好むので、生育期や冬場は直射日光でも大丈夫。日当たりの良い環境で育てます。寒さには強めですが、真冬は念のため5℃を下回りそうな場合は明るい室内に取り込むことをおすすめします。
真夏は葉が焼けたり高温になりすぎないよう半日陰(50%)ほどに遮光をして、風通しの良い場所に置いてあげてください。
フォーカリアが枯れる際は下葉から溶けるように腐りやすいので、梅雨時期も含めなるべく風通しの良い場所での管理がおすすめです。
植え替えは生育期であればいつでも可能ですが、成長が盛んになりはじめる初春や初秋などが特におすすめです。根っこはその先端がふわふわとした細根ですので、用土は比較的細かめで通気性の良いものが向いています。
下葉の枯れ葉は固くなっていることが多いので、指を怪我をしないよう取り除いてくださいね。
また、葉挿しは難しいので、繁殖(増やし方)は植替えの際などに仔株を取って挿し木にしたり、種を蒔いてふやします。
フォーカリアの花期は秋から冬にかけて
秋から冬にかけては開花のシーズンとなり、株先端の葉の間から舌のように蕾を突き出して花を咲かせます。
花のカラーはどの品種も似た色味の明るい黄色ですが、品種により花弁の数に多少の差があります。また「雪波(F.candida)」という品種に関しては属内で唯一白花を咲かせます。
交配も比較的容易で結実率や発芽率も良いため、種から育てる楽しみもありますよ。
フォーカリアの種まきとその後約1年間の成長の様子
上の写真は「四海波」の実生の様子です(21年9月19日播種→9月28日発芽)。10日程度で発芽し、その後の成長・変化も多肉植物としては速い方だと感じます。(前歯のようにチョロッとのぞいてくる本葉が何とも言えない可愛さですね。)
ちなみに品種にもよりますがフォーカリアの種子の鞘は他の多肉植物に比べて開きにくく、何年も前の種子がそのまま残っている可能性があります。苗を購入された際は枯れ葉と思って捨ててしまわず、ぜひチェックしてみてくださいね!
●フォーカリアの交配と採種について
また、気に入った品種が複数あれば、花同士の中心部を筆などでぬぐい合う(中心部のめしべに花粉を付ける)ことで交配が可能ですので、ぜひ挑戦してみてください。1か月程で花の元部が膨らんでくれば交配成功のサインです。
フォーカリアは虫を媒介者としていつのまにか結実していることも多く、園芸栽培においても親品種の特定が困難な交雑種が沢山生まれています。そのため、複数苗栽培されており、そのうえで確実に狙った品種で交配したい場合は「その他と交雑しないようにネットをかぶせたり、置き場所を変える」など工夫されることをおすすめします。
尚、できた種子の鞘が枯れこんでくれば採種が可能です。
枯れこむまでには割と時間がかかり、時期的には概ね翌年の夏前頃となります。
(もしかするとそれ以前にすでに種子が出来上がっているのかもしれませんが、発芽が確実なのは鞘が乾燥してからの採種となります。)
ちなみに以前は全33種類と言われていたフォーカリアですが、近年分類学上の改訂があり現在は6種類にまで一気に減って、その他はその亜種として登録し直されています。※必要な方は末尾の資料を参照ください。
今にも動き出しそうな姿が魅力的なフォーカリアたち。蒸れに気をつければとても育てやすい多肉植物ですので、ぜひ手に取って楽しんでみてくださいね。
・フォーカリアの分類や種の特徴に関する詳細リンク “ Groen, 1999. Bothalia, 29 “
ー今月のひとことー
先日夜中に突然「源氏パイ」が食べたくなり、買いに行くにも遅いのでなんとか作れないものかと調べてやってみたところ、あまりにも簡単に美味しくできたので感動しました!
作業時間としては5分もかからず、あとは15分焼き上がるのを待つだけ。お花が開くかのようにハート形に膨らむ様子を見るのもわくわくしました。おうちでの簡単おやつとしてぜひどうぞ!(焼く前に溶き卵を塗った方がより本家に近づくと思われます)
参考にしたレシピ: 冷凍パイシートでハートのパイ(源氏パイ)