コノフィツム
–Conophytum–
小さな体にたくさんの魅力と不思議が詰まった多肉植物「コノフィツム属」!
コノフィツムは以前ご紹介したリトープスと同じハマミズナ科の植物で、小さなものだと1頭数mm、大きなものでも数cm程度とかなり小柄で可愛らしい体つきをしています。
そのような小さな体ながら、それぞれに独特な色や模様を持つこと、またその生態の興味深さも手伝ってここ数年で韓国・中国を中心に大きなブームに。日本の通販・オークションサイト等での販売価格もかつての10倍以上に跳ね上がるなど、猛烈な過熱ぶりをみせた多肉植物です。
コノフィツムの基本的な成長パターン
そんな人気者のコノフィツム。主に南アフリカやナミビアなどの乾燥地帯に自生する植物で、リトープスと同じく基本的に日光と通風を好み、暑さ寒さにも比較的強い育てやすい植物だと感じています。
ただし栽培上大きなポイントが一点あり、それは「夏場は皮を被って休眠する」ということ。
①コノフィツムの成長期(秋~翌年の夏前頃)には、その球体の中で翌年に向けた新たな球体が人知れずゆっくりと育っているのですが、②暑さが増してくる6月頃には一旦そのピークを迎え、現在の表皮は役目を終えたように薄く乾燥しはじめて、内部に育った新球を包むような形で夏を越します(休眠)。
③そして暑さが和らいでくる9月〜10月にかけて、その旧皮を破るようにして新球が顔を覗かせます(脱皮)。④品種によってはその際に分球(分頭)し、数をふやすことも(うれしい)。その後はまた①の成長期に入ります。
コノフィツムを枯らさないためのポイント
経験的にはこの夏場の脱皮前後の時期に枯らす・腐らせてしまう失敗が一番多く、そうならない為に大切なのは
- 冬季にたっぷりと日光を浴びせて株を元気にしておく
- 休眠中のような一見動きのない時期にも日光や風は当てておく(半日陰程度)
- 小型種など乾燥に弱めの品種は休眠中も多少の水やりをする
- 脱皮が始まった時期にいきなりお水をあげすぎない
等のポイントが挙げられます。
逆に言うと
- 脱皮直後から冬場にかけて充分に陽に当てていなかった
- 休眠中だからと日当たりや風通しの良くない場所に置いていた
- 夏の暑さにおびえて、お水が必要な品種の水やりを控えすぎた
- 脱皮前後に台風などの雨が急に降りこんだり突然大量の灌水をした
などにより、苗が枯れたり溶けてしまうリスクが高まってしまいます。
これらのポイントに気を付けながら栽培を行なってみてくださいね。
コノフィツムの基本的な育て方
-日光・水やり・温度・土・植替え-
コノフィツムは基本的に日光と通風を好みますので、雨の当たらない屋外のベランダや軒下などで育てます。
生育期は遮光20~30%程度でしっかりと陽に当てると元気な株に育ちます。
ただし真夏の休眠期は半日陰(遮光50%)ほどにして、暑くなりすぎずほどほどに陽が当たるよう調整します。同時に、風通しよく、蒸れないようにも気を付けます。
日差しがあまり強くない冬季などは直射日光下でも大丈夫です。
生育期はどの品種も2週間に1回程度、しっかりと水やりを行います。ただし、梅雨時や真冬など水やりがダメージになりやすい時期は様子を見ながら月1回程度に間隔を空けます。
夏場の休眠時は、窓のあるタイプや個体の大きなタイプ(それぞれ後述)は完全に断水しても大丈夫。ただし小型の品種や小さな実生苗は断水に耐えられないことがあるので、月に1回程度・涼しめの夜間に表土が湿るくらいの軽い灌水を行います(こちらも後述)。
※お水が多すぎたり日光が足りないとひょろ長く縦に伸びてきますので、そうならないよう観察しながら水やりを行なってみてください。ただし、水が足りないと根が伸びていかない印象も受けますので、特に植替え後などは水やりの間隔が空きすぎないようお気を付けください。
↑水やりのあとに曇天が続き伸びすぎてしまった「風鈴玉」
デリケートで育てるのがやや難しいと思われがちなコノフィツムですが、耐暑性も耐寒性もあり、前述の成長のポイントや栽培のコツをつかめば強健でとても育てやすいグループです。
わが家では小苗を含め真夏も真冬も屋外の棚管理ですが、人が不調を起こすような過酷な時期でも毎年へっちゃらな顔をしています(38℃ ~ -3℃、厳寒期はビニール保護あり)。
とはいえ、夏は風通し良くなるべく涼しくなるように、冬は寒風が当たり続けないようになど工夫をされるとより安心です。
コノフィツムの植え替えは、夏場の脱皮が終わり、生育期が始まる秋がおすすめです。あまり寒くなると根の付きが悪くなるので、11月中には終わらせたいところです(加温設備のある栽培環境の場合はこの限りではありません)。
コノフィツムの根はふわふわした細根ですので、通気性の良い細かめの用土が適しています。植え付ける際は根を半分以上切り落としてもかまいません。根が木質化しやすいので、古い根は切り落として新陳代謝を促した方が元気に育つ印象です。
根を切った苗は明るい日陰などで切り口を2日程度乾かし、清潔な用土に植えつけます。植え付け後は乾かしすぎずたっぷりと灌水し、その後も暫くは乾燥させすぎないようお気をつけください(発根促進のため)。
※追記:上からさらに1年後の10月の様子(脱皮の皮むき後)。模様がよりはっきりしてきて楽しい時期です!
更に詳しく!
タイプ別・色々な種類のコノフィツムの育て方
コノフィツムの原種は約200種類ほど、園芸分野での交配品種を含めると更に数が増えその特徴は様々ですが、基本的には「窓のある品種は光を好む」「小さめなものほど乾燥には弱め」というイメージを持っておくと栽培がしやすいかもしれません。以下、それぞれのタイプに分けてご紹介していきます!
『窓のある品種』
マウガニーやラツム、ペルシダムなど
オフタルモ、マウガニー、ラツム、ペルシダムなど上部に半透明な窓のある品種は、強い光を好みます。
冬場は直射日光でも良いくらいで、乾燥にも強く、特にペルシダム(写真下段)などは脱皮の時期に多く水をやると二重脱皮(=短期間で脱皮したうえ更に脱皮をしてしまい小型化&型崩れする)状態になりやすいので、その時期(夏場)は完全に断水するくらいでも大丈夫です。
同じくオフタルモもお水のやりすぎや日照不足ですぐに徒長(間延び)してしまうので注意します。
またこれらの有窓品種は「旧皮を被って一定期間休眠」というよりも、どちらかというとリトープスのように「ゆっくり旧皮を脱いでゆく脱皮」を行う傾向があります。分かりやすく「休眠」という感じにはなりにくいため、つい余計にお水をやってしまいがちですのでお気を付けください。更に、強光は好みますが体側面が傷みやすい傾向があり、その傷が腐りの原因になることがあります。急な日焼けや虫食いにもご注意くださいね。
『小型の品種』
アカベンセやステファニー、ルブロリネアツムなど
写真の品種らは一頭のサイズがわずか数ミリ程度ととても小さく、上記の有窓品種らよりも光量を必要としないかわりに水切れに弱めという特徴があります。
ですので夏場の休眠中含め、水やりの頻度(空きすぎ)には気をつけます。
生育期はその他の品種と同じく2週間に1回程度しっかりと。休眠中は翌日が涼しそうな夜間を見計らい、「小さめのひと鉢=フィルムケース1杯分ほど」の水を表土が湿る程度に灌水します。
また、種子を蒔いて育てた小さな実生苗(1年生~2年生くらいまで)も、夏場の休眠中は小型種同様、多少の灌水を続ける管理を行います。
『昔ながらの強健普及種』
タビ型、クラ型、コマ型形状の品種
本体のカラーが概ね翡翠色一色で、個体のサイズも大きめ。暑さ寒さに強く育てやすいタイプです。
乾燥にも強く夏場は断水にも耐え、丈夫でよくふえます。
このタイプはコノフィツムが日本に導入された昭和の初め頃から普及したということもあり、和名を持つものが多いのも特徴的です。
また更なる特徴としては、「強健で貯水力があるがゆえに、他のタイプよりやや身割れをしやすい」という点。
少し水が多めだとこのように球体が割れてしまいやすいです。特に暖かい時期に起きやすく、台風シーズンなどの急な雨の降りこみには気を付けたいところです。
ただ、内側の新球が無事であれば、このまま次の脱皮まで育てることが出来ます。(なるべく乾燥気味に管理します。)心配な方は念のため「ベンレート」などの殺菌剤を裂け目に塗布しておくと安心ですよ。
加えて、コノフィツムの花は一重咲きで白色や薄桃色など清楚な雰囲気のものが多いのですが、このタイプの品種は本体の素朴さとは裏腹に、花色や形などの種類が豊富で花期にはとても華やかです!
色とりどり!コノフィツムの花期
コノフィツムは脱皮が終わった秋冬〜春にかけてが開花シーズンとなります。(ペルシダムなど一部の品種は夏~秋にかけて。)なかには「夜咲き」といって、夜間に花を咲かせる品種もあり面白いですよ。
※花びらは本体にへばりつくと茶色く跡が残りやすいので、気になる方は花後[上の写真の右下画像]のように花弁を絞り上げておくと球体が汚れにくいです。
また、品種にもよりますがコノフィツムは交配や結実も比較的容易です。交配させたい花同士の中心部をテグスなどでコチョコチョし合い、お互いの花粉を付け合います。
未だなされていない交配の組み合わせもまだまだ数多くあり、これから自分だけの品種作りに挑戦できる楽しみもあります!もしかすると世界的に注目される品種ができるかも…
コノフィツムはその他にも、まるでお顔のように見えて微笑ましいもの、動物のようにかわいらしいもの、模様が派手で目を惹くものなどたくさんの種類があり、眺めて・育てて楽しく、コレクション性も高い魅力的な植物です。
コンパクトで場所をとらない点も管理がしやすくおすすめですので、ぜひ一度お手に取ってみてくださいね!
★コノフィツム属はCITESⅢ類へ→輸入等にご注意を
動植物の国際取引には「ワシントン条約(CITES)」という協定が適用され、それぞれの国の希少な野生動植物が乱獲や絶滅等の危機に瀕さないよう保護されています。
このたび、その締約国会議にて条約の改正が行われ、かねてよりその人気から盗掘や自生地の消失が問題となっていたコノフィツム属の全種がCITES付属書Ⅲ類(掲載国:南アフリカ)として新たに掲載されることとなりました。
これまでどおり商業的な取引自体は可能ですが、改正が適用される令和5年2月23日以降に行われる「南アフリカを生産・栽培地や輸出国とする苗や種子の国際移動」には、南アフリカ政府の発行する輸出許可書等追加書類が必要となりますので、輸入をお考えの方は少々ご注意ください。
ちなみに、南アフリカ以外を栽培地や輸出国とする種苗の輸入に関しては2023年3月現在で、
・輸出国(南アフリカ以外の国)の原産地証明書(Certificate of Origin)
もしくは
・輸入の際に必要な植物検疫証明書(Phytosanitary certificate)の中の原産地欄(Place of Origin)に南ア以外の国名の記載
このどちらかがあればこれまでどおり輸入が可能とのことです。
後者は現在多肉植物輸入時の必須書類であり、また基本的にこの部分は送り主に記載を頼まなくても輸出国名が抜けなく入力され送られてきますので、実質南ア以外に関しては取引上の大きな変更点は今のところなさそうです。(勿論、可能な方は念のため輸入元に記載漏れが無いよう念押しください。)
尚こちらの項の内容は、経済産業省・野生動植物貿易審査室に直接確認を取ったものですが、万が一誤りや変更があってはいけませんので、国際取引の際はご自身で輸入元の国名と輸入品種を具体的に明らかにして、再度確認等お願いします!
●条約改正のお知らせ資料『ワシントン条約:第 19 回締約国会議における附属書改正事項について』 コノフィツム掲載はP.18
今回掲載できなかったコノフィツム属の大人気品種「ブルゲリ」に関する単独ページはこちらから↓
―今月のひとこと―
あっっという間に12月となってしまいました…!今年は特にコロナをはじめいろいろな事情で普段どおりに過ごせず、不安な思いやご苦労をされた方も多かったことと思います。大変な一年でしたよね…
私も沢山の不慣れな事でドタバタ(ジタバタ)していましたが、こんな時、普段となんら変わらない顔をして植物がそばにいてくれる事はとても心強く、いつも以上に有難さを感じる日々でした。
暦の上で、12月21日の『冬至』の日は、陰極まって陽となり、日ごとに春が近づきはじめる『一陽来復』の節目となります。良くない物事がここから好転していくタイミングとも言われますので、これから色んな事が良くなっていくと信じて、お互いに心身健康で過ごしていきましょう!暖かくして、ぜひ良いお年をお迎えくださいね❁
お読みくださり有難うございました!