エケベリア –Echeveria–
ロゼット型の葉が可愛らしい多肉植物界のヒロイン、ベンケイソウ科「エケベリア」属の仲間たち。
放射状に葉を広げたそのシルエットは、まるで色とりどりのお花が咲いているかのようでとっても華やかです!
その人気から流通量も極めて多く、多肉植物といえばまずエケベリアから育てはじめる方も少なくないほど。
今回はそんなエケベリアの魅力と育て方をご紹介してきます!
エケベリアってどんな植物?
エケベリアはメキシコや中南米の乾燥地帯が原産の多肉植物で、アメリカ大陸を中心に約150種類ほどが存在しています。
原産地では木立や低木の下、また乾燥地の岩の間や裂け目などに自生し、直径4cm程度の小型種から60cm程の大型種まで大きさも色も様々。世界的にも栽培や交配が盛んで、園芸品種まで含めると国内外に数え切れないほどの品種が存在している人気植物です。
葉っぱや挿し穂で簡単に殖やせることや、乾燥に強く水やりが少なくてもよいこと、また何よりその見た目の可愛らしさなどから、鉢の代わりに空き缶に植えつけたり、リースに挿したりと、お庭やベランダで思い思いに育てられています。
エケベリアの育て方のポイント(日光・水やり・温度・土など)
エケベリアは基本的には強い品種ですので、雨を避けて日光不足と加湿、凍結に気をつければ育て方はさほど難しくありません。
通年日当たりの良い屋外で育てます。蒸れや高湿度はあまり好まないので、雨の当たらない風通しの良い場所においてあげてください。
直射日光下での栽培も可能ですが、いきなり強光に当てると葉が焼けてしまうことがあるので、季節の変わり目や購入直後などはお気をつけください。
エケベリアは過ごしやすい春と秋によく成長しますので、その時期は週に1回~隔週でたっぷりと水やりを行います。
梅雨時~真夏・真冬など、生育が鈍る時期は水やりがダメージにつながりやすいため、月に1回程度に控えます。天候によっては断水を行っても多くの場合問題ありません。特に厳寒期は氷点下まで気温が下がると葉の水分が凍り、その後苗が溶けてしまいやすくなるので、極力水やりを控えて体内の水分量を減らしてやると耐寒性が上がります。
※水をやった後はロゼットの真ん中に水が溜まりやすく、そこから腐りや傷みに繋がりやすいので、ブワローなどで水滴を飛ばしておくと安心です。初めから株元に水やりするのもおすすめ。
品種や水やりの状態にもよりますが、暑さはやや苦手、寒さにはやや強めの印象です。夏場はなるべく風通しよく涼しい場所で、冬場は寒風を避けられる霜や雪の降りこまない場所での管理がおすすめ。
とはいえ暖地の我が家ではほぼ通年屋外の軒下で管理をしています(年間の気温:38℃ ~ -4℃)。屋外栽培の場合、5℃近くなったら寒風で傷まないよう、周りをビニールや寒冷紗・不織布などで囲んであげるとより安心です。
植え替えは過ごしやすくなった春や秋がおすすめです。根っこが細めですので、通気性の良い細かめの用土に植えつけます。
日本でエケベリアを栽培する際の一番のポイント!夏の乗り越え方
エケベリア栽培の1番の注意点は日本の梅雨から夏場にかけて。
エケベリアをはじめベンケイソウ科の多肉植物は、暑さが増し始めると品種の差が分からないほど一様に青緑色がかり、形も緩みがちになります。
ひどくなると溶けるように腐っていくものも…
原産地でも気温は上がりますが、夜間は真夏でもおおむね20℃以下にさがり、同じく湿度も日本より低めなのでかなり過ごしやすくなるようです。
一方、昼間の高温に加えて高湿度の熱帯夜が続くような日本の暑さでは、夜間行われるはずの苗の呼吸や代謝がうまくできず、根や本体が弱り、傷んで腐ったり枯れたりする原因になることも。
エケベリアなどベンケイソウ科の多肉植物は、主に夜間に葉の気孔を開いて呼吸や蒸散などを行います。
ですので、大切な苗はやや強めに遮光をするなど温度を下げやすくしたり、水やりを控え送風機の風に当てるなどして、夜だけでも多少涼しくなるように工夫されてみてくださいね。(日光は必要なので遮光は加減が難しいですが…)。そういった対策で夏のダメージが少しでも和らぐ可能性があります。
ちなみに、冬場も氷点下まで気温が下がると葉の水分が凍り、その後苗が溶けてしまいやすくなります。なので気温が大きく下がる時期は極力水やりを控えて体内の水分量を減らし、凍りにくくしてやります。
また寒風で傷まないよう、周りをビニールや寒冷紗、不織布などで囲んであげるとより安心です。
エケベリアの紅葉の魅力
とはいえ、冬季はエケベリアが紅葉し、より一層美しくなる季節です。
寒くなるまでにしっかり日光を当てておいてやると、葉にたくさんの糖が作られ、美しい紅葉となる準備ができますので、暑さが和らいできたら積極的に日光に当ててあげましょう!
それぞれの品種の特徴が一番出やすい時期ですので、ぜひ素敵な紅葉シーズンをお楽しみに。
エケベリアの花期と交配方法
品種により多少の差がありますが、エケベリアは概ね5月ごろに黄色やオレンジ色などの可愛い花を咲かせます。
結実率はあまり高くない印象ですが、もちろん交配も可能。交配しない場合は早めに切ってあげると株の体力が温存できるかと思います。
エケベリアの交配にチャレンジ
①開花が始まった苗を用意します(母株は体力を使うので元気そうな苗がおすすめ)。
②花弁を剥くと現れる膨らみの先端のツノのような部分がめしべです。この先端がほんの少し開き、蜜が出ていると受粉適期ですので、交配したい開花中の花粉親(父株)を用意して受粉作業開始です。
母株のめしべの先端に、交配したい父株の花粉(めしべを囲むように雄しべが10本あります)をピンセットなどで2,3本取り、ポンポンとめしべの先端に優しく付けていきます。
蜜が多すぎる場合は軽く拭いてからがおすすめ。雄しべの先からしっかりと粉のような花粉が出ていることを確認して行います。
③受粉が成功するとめしべの根本の子房が膨らみ、その後種子が熟します。種子の鞘は分かりやすく星形に展開してくるタイプ(3-上)と、様子が変わらないタイプ(3-下)の二通りに分かれます。星形タイプはいつの間にか弾けて種子が飛んで行ってしまうのでお気をつけください(写真はすでに弾けてしまっていたリラシナの鞘です)。
④種子収穫の目安は、星形タイプ:膨らんだ星が裂け始めたら。様子が変わらないタイプ:鞘の付け根が乾燥して萎えてきたらです。期間はおおよそ交配してから1か月半~2か月くらいで収穫が可能になります。種子はとっても小さく軽いので、慎重に取り出してくださいね。種まきは20~25度がしばらく保てる環境・季節がおすすめ。春か秋に挑戦を!
交配した種を蒔いてみると…
秋に蒔いたエケベリアの種子が2週間弱で芽を出しました。
種まきには通常用土に専用の「たねまき培土」を半分混ぜ込み、表土には赤玉土細粒と川砂を被せています。その上からパラパラと種を蒔き、半日陰で腰水にて管理をしています。
発芽すぐの段階からすでにぷっくりとした多肉質の葉が育っていてとても可愛らしいですね!
追記 :さらに半年後の様子
赤ポチの爪も出て、しっかりエケベリアの顔つきになってきました。
七福神やチワワエンシスなどエケベリアの仲間たちをご紹介(随時追加予定)
季節ごとのコツさえ掴めば栽培も容易で、繁殖もアレンジも楽しいエケベリアの仲間たち。
お近くの園芸店などでも手に取りやすいですし、現在では韓国をはじめ日本以外で交配・育成された苗をネットショップやオークションサイト(ヤフオクやメルカリ)などで購入することもできます。
世界的に栽培が盛んなこともあり、「同じ苗が別の名で販売されている」といったややこしさがある点にはご注意いただきつつ…その可愛らしくもたくましい姿にぜひ癒されてみてくださいね!
―今月のひとこと―
このポムポムプリンちゃんのゾンビのような物体は、アシナガバチの巣です…
先日、植物を育てている大事なベランダの柵にわらわらと営巣しているのを見つけました。以前からわが家の玄関付近には、割と温厚といわれるツチバチが沢山飛んでいて「巣でもあるのかな〜どうしよう…」と気をもんでいたのですが、その隙に、不覚にもより危険な刺客に本丸を攻め込まれていました。
悩んだ挙句、城主(私)は自らありったけの甲冑に身を包み遠くから飛び道具のスプレーを放って一掃。なんとか無事難を逃れましたが、大変いやな汗をかきました…!特に夏から秋は凶暴とのこと。巣に気づかずうっかり触るところでしたので、皆様も何卒お気をつけを…!(刺しさえしなければ全然居てくれてもよいのですが…!