セネシオ/セネキオ属 -Senecio- キュリオ属 -Curio- ①
今回のご紹介は、多種多様な形が楽しめる育てやすいキク科のセネシオ(セネキオ)属とキュリオ属の仲間たちです。
セネシオ属とは(キュリオ属との関係)
セネシオ属の植物は世界中に広く分布していて、なんと約1200種類*も存在する、開花植物としては世界最大級のグループのひとつです。
草姿も多種多様で、そのなかには多肉質ではない通常の草花も含まれますが、今回こちらでは多肉植物としてのセネシオの仲間たちをご紹介していきます。
多肉植物としてのセネシオは南アフリカ、西アフリカ、マダガスカルなどを中心に広く自生しています。
蔓のような細い茎を長く伸ばすもの、茎や根が肥大化したもの、葉の形がユニークなものなど、様々なタイプが存在している面白いグループです。
また、現在ではそのうち20種ほどが、1997年に新しくつくられたCurio(キュリオ)属に新分類されています。
ここでは一緒にご紹介していきますので、必要な方は日本語名の後ろに続く学名をご確認ください。
キュリオ属(旧セネシオ属)の人気品種 -ネックレス系-
セネシオ属を代表するような「ネックレス系(紐系)」品種は、現在ほとんどがキュリオ属に新分類されています。
写真右は、園芸店や多肉植物の寄せ植えなどで大人気の「グリーンネックレス/緑の鈴(Curio rowleyanus)」。
海外では’string of pearls ‘ という名で広く知られています。
その名の通り真珠の首飾りのような葉と茎をどんどん伸ばしていく面白い植物です。
写真左は少し葉の細長い「三日月ネックレス(Curio radicans)」という品種。
こちらもその見た目から英語圏では通称’string of banans’と呼ばれています。
どちらも南アフリカやナミビア原産の多肉植物。
あまり陽が強すぎたりお水が少なすぎると株元から枯れ込むのでご注意を。その場合は元気なところで切り戻して挿し木が可能です。
斑入りの品種もあります。葉緑素がマーブル模様に入り混じり、葉先がツンと尖る「エンジェルティアーズ錦(Curio herreanus f.variegata)」。
グリーンネックレスほど葉がまん丸ではなく、本当に「涙型」をしています。
陽によく当たったり寒さが増してくるとややピンクに色づき、とても可愛らしい印象です!
こちらはまるでイルカが元気に飛び跳ねているかのような「ドルフィンネックレス/ペレグリヌス(交配種)」。
「グリーンネックレス」と、この後ご紹介する「七宝樹」の交配品種と言われています。
2017年、日本のSNS投稿から人気に火がつき、あまりの可愛らしさに世界的にもよく知られるようになりました。
これらのネックレス系品種は通常の多肉植物よりやや肥料を好みますので、様子を見ながら水やり同様、頻度を増やしてみて下さい。
「セネキオ」「セネシオ」呼び名はどちら?
多肉植物愛好家の間では「セネキオ?セネシオ?」と、呼び名についての疑問がしばしば話題にのぼります。
植物の学名表記を行う古典ラテン語では「セネキオ」、現在の世界的には「セネシオ(セニースィオ)」と発音されていることが多く、どちらを使用しても問題はありません。(今回は現在の使用者数の多さから’セネシオ’表記を優先しました。)
ちなみに、そもそもの属名’Senecio’とは、古いラテン語で’老人’という意味。
多くの品種が、開花後にふわふわした白い綿毛のような種子を付けることから、そう名付けられたと言われています。
木立タイプの人気品種
楕円型の多肉質な茎を重ねるように育つ「七宝樹(Curio articulatus)」。
写真は葉が斑入りカラーの「七宝樹錦」です。前述のとおり、「ドルフィンネックレス」の交配親。
暑くなると半休眠状態となって葉が落ちますが、秋~冬頃にはまた茎の上部を中心にかわいい葉を出しますのでご心配なく。ある程度育つと茎に長さが出始め、横倒しになり這うように広がっていくことも。
「マサイの矢尻(Senecio kleiniiformis)」内巻きのとんがり葉先がまさに矢尻のような品種。
南アフリカ原産の植物で、脇芽や地下茎を出しながら横に広がりつつも、木立のように成長していきます。
↑茎がお庭の畑に転がってそのまま育ってしまったマサイの矢尻。上の写真と元々は同じ苗です。
多肉植物はどれもそうですが、季節ごとの差だけでなく、日光が弱かったり土壌の水分が多いと同じ品種とは思えないほどに葉の色や姿形が変わってきます。
今回は矢尻というよりマサイのおたまに…(マサイ族もおたま使うのでしょうか…?)
セネシオ属とキュリオ属 育て方のポイント
他の多肉植物よりお水や肥料を好みます。陽にあたるのも好き。
過ごしやすい春と秋によく成長します。
今回ご紹介したセネシオ/キュリオ属どちらの品種も日光を好みますので、基本的には日当たりの良い屋外管理がおすすめです。
しかし、ネックレス系品種はあまり強光ですと枯れこみやすくなります。(原産地でも岩の間や他の植物の株元など、やや暗めの場所を這うように伸びているそうです。)
ですので、通年直射日光下でも大丈夫ですが、真夏は半日陰などによけてあげると安心です。
一般的な多肉植物よりもお水を好む傾向があります。
風通しが良く、乾燥している置き場であれば、特にネックレス系の場合成長期だと3日に1回あげてもよいくらい。(梅雨時や真夏・真冬などはダメージになりやすいので控えめに。)わが家ではネックレス系のみ通年雨ざらしで育てています。
お水が足りないと葉っぱがしぼんできたり落ちたりしてくるので、少し多めの管理を心がけてみてください。
ただ、土の中のお水は好きでも周りの環境の湿度が高すぎるのは好みません。しっかりと風通しのよい置き場においてあげてくださいね。
セネシオ属もキュリオ属も基本的には暑さ寒さに強く、管理がしやすい植物です。暖地の我が家では通年屋外管理をしています(年間38℃~-4℃)。
ただし極寒期は雪や霜に当てないよう、屋根や冷風よけカバーをしたり、しっかりお水を控えたりなど工夫が必要です。ですのでできれば5度を下回りはじめたら、明るい室内に取り込んだ方が安心です。
植え替えは過ごしやすくなった春や秋がおすすめです。根が細めですので、通気性の良い細かめの用土に植えつけます。ただし、多肉用やサボテン用の用土をそのまま使うと、お水を好むセネシオやキュリオにとっては乾燥しすぎる可能性があります。そのため草花用の用土を半分ほど混ぜ込むのもおすすめです。
斑入り品種の注意点
写真右下は斑入り品種の「グリーンネックレス錦」です。
こういった斑入り品種の場合、育つにつれて斑入りではない緑一色の通常葉が出てくると、そちらばかりが伸びはじめ、結果的に「斑が徐々に消えていってしまう」という現象が起こりやすくなります。
ですので斑入りを維持したい場合、緑色だけの葉がついた茎が出てきたらその部分を根元で切り取って、別で育てることをお勧めします。
また斑入り品種は通常のタイプよりも葉緑素が少ないので、成長の為にはより日光を必要としますが、同時に斑の部分が日光で焼けてしまいやすいといった難しい面もあります。季節ごとにベストな置き場を見つけられるよう、よく観察しながら育ててみてくださいね。
葉挿しは可能?セネシオの増やし方
今回ご紹介したセネシオの仲間たちはどれも葉挿しが難しいので、殖やすには伸びた茎や脇芽のほどよいところをカットして、挿し穂にします。
切り口をよく乾かした後、清潔な用土に挿しておくとひと月も経たないうちに根が伸びはじめます。
しっかりと根っこが出るまでは直射日光に当てないよう、半日陰で管理を行うと安心です。
最後に、こちら↑は三日月ネックレスとよく似た雰囲気で、葉や茎が全体的に赤くなる「ルビーネックレス」。
キュリオの仲間とよく似た形・名前ですが、学名をCrassothonna capensis(旧Othonna capensis)といい、セネシオやキュリオ属ではなくクラスオトンナ属の仲間となります。
同じキク科で姿も管理方法も似ているのですが、混同されやすいので一応お知らせまで。(念のために育て方:週に1回程度お水をたっぷりと。こちらも屋外の雨晒しで育てておられる方も多いですよ。)
丈夫で育てやすく、寄せ植えなどにも大活躍するセネシオ属とキュリオ属の仲間たち。
お手元でじっくり育ててみてくださいね。
もっとたくさんの品種をご紹介・セネシオ②の記事はこちら↓
-今月のひとこと-
この夏もなんとか生きのびましたが…皆様も元気でお過ごしですか?
暑さ寒さも彼岸までと申しますが、この時期のお花といえばまさに「彼岸花」。
「曼珠沙華」という別名でもおなじみですが、もともとは中国原産の植物でありながら今では日本各地にすっかり根を下ろし、その呼び名は地域の通り名を含めると国内だけで1000通りを超えるほど!
原産地中国での呼び名は、もともと’石地のニンニク’を意味する「石蒜(シースァン)」をはじめいくつかありますが、日本の「彼岸花」という名前がかっこいい!と若者らによって逆輸入され、今ではそちらが定着しつつあるという面白い話もあります。
韓国では꽃무릇(コンムル)と呼ばれますが、花が散ったあとに葉が出てくるというこの植物の特性を、会うことの叶わない悲恋に見立て ’花は葉を想い、葉は花を想う’「想思花(サンサファ)」という素敵な通称で呼ばれることもあります。
一方欧米ではまさにその見た目から「レッドスパイダーリリー」と呼ばれており、同じ花でも国や地域によっていろんな名前や逸話があっておもしろいなぁと感じています!